下鴨神社~さざれ石・御手洗川

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精霊馬はお盆の飾り物の一つです。
馬に見立てた「きゅうり」と、
牛に見立てた「なす」に
割り箸などで足を挿して、飾るものです。

キュウリの「馬」はご先祖さまが家に
帰ってくるときに、少しでも早く帰れるようにと。

ナスの「牛」はお盆の間滞在したご先祖さまが
のんびりあの世へ帰っていけるようにと、
願いをこめています。

それはそうと…

本日は前回に引き続き、
京都下鴨神社の旅です。

糺の森を抜けて、下鴨神社の鳥居をくぐり、
いよいよ下鴨神社境内をご一緒に歩いていきましょう!

下鴨神社の鳥居
下鴨神社の鳥居

さざれ石

鳥居に入ってすぐ左側を御覧ください。
さて、あれは、何でしょうか?

さざれ石
さざれ石

「さざれ石」。日本人なら必ず聞き覚えがあるはずです。

そうです。国歌に歌われている、
「さざれ石」です。

さざれ石はもともと「小さな石」という意味ですが、
長い年月の間石と石の隙間に炭酸カルシウムや水酸化鉄が流れ込んで
コンクリート状に固まったものをも「さざれ石」と呼びます。

下鴨神社入り口に鎮座しているさざれ石も、
「小さな石」という意味のさざれ石ではなく、
「小さな石が凝固して大きな岩になったもの」という意味の、
さざれ石です。

『古今和歌集』にさざれ石を詠んだ歌があり、
国家の原典となっています。

我が君は 千代に八千代に
さざれ石の 巌となりて 苔のむすまで
(古今343 詠人知らず)

国歌の歌詞を聴いていて、
疑問に思ったことはありませんか?

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大きな岩が千代に八千代に長い時間をかけて
小さな石になるのはわかるが、

小さな石は千代に八千代にどんなに長い時間をかけたって、
大きな岩にはならないだろう!
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しかし、違うんですね。

実際に、長い年月をかけて、小さな石が
大きな岩になることが、あるのです。

小石と小石の間に、長い年月の間に
炭酸カルシウムや水酸化鉄が流れ込んで、
大きな巌となるのです。

それが、「さざれ石」です。

なので、「君が代」の歌詞は少しも嘘ではないのです。

夏越神事(なごしのしんじ)と人形(ひとがた)

8月6日、下鴨神社では伝統行事「夏越神事(なごしのしんじ)」が行われます。

御手洗川
御手洗川

夏越神事は別名「矢取神事」とも言われます。

御手洗池
御手洗池

矢に見立てた斎串(いぐし)を境内の
御手洗池に(みたらしいけ)に50本円形に立てて、
裸男(はだかおとこ)と呼ばれる上半身裸の屈強な男たちが、
御手洗池の両岸に別れて並びます。

御手洗池
御手洗池

合図の音とともに神官が人々の罪をうつした「人形(ひとがた)」を
ばらまき、それと同時に両岸から裸男が飛び出して
池の中央の斎串(いぐし)を奪いあうのです。激しい行事です。

その由来は、神話に語られている物語です。

玉依媛命(タマヨリビメノミコト。下鴨神社で祀られている神)が
瀬見の小川(下鴨神社境内を流れる川)から流れてきた
矢(丹塗矢 にぬりや)を持ち帰ったところ、
身ごもって賀茂別雷神(かもわけいかずちのかみ・上賀茂神社の祭神)
を生んだと言います。

私が下鴨神社を訪ねた時は、夏越神事の直前で、
神事に使う「人形(ひとがた)」、
…紙を人の形に切り抜いた「人形」が置いてありました。

人形
人形

人形
人形

これを体の一部にこすりつけて、ふっと息を払い、8月6日
夏越神事の時、合図の音とともに、
ワッと撒き散らすのです。

一年の前半の穢れをはらい、無病息災を願う意味があります。

恋心を止めてくださいの歌

その、夏越神事の舞台となる境内の御手洗川(池)。

御手洗池
御手洗池

晴れた日も美しいですが、
小雨ふりしきる御手洗側も、なかなか風情があります。

ぐるり池のまわりを歩くと、いくつか案内板に歌が書いてあるのが
目にとまります。その中から一首。

恋せじと御手洗川にせしみそぎ
神は受けずもなりにけるかな(古今集・恋一・501)

どうかこの恋心を消してください。そう言って、御手洗川で禊をしたのに。
ああ、神はお聞き入れにならないのか。ますます恋心がつのるのです。

この歌は『古今和歌集』の詠み人知らずの歌ですが、
『伊勢物語』では在原業平の歌ということになっています。

在原業平が清和天皇にとついだ藤原高子と密通して、
相手は天皇の女御ですから、こんなことがバレたら大変なことだ。
やめないと。ああ、でも恋しい。この気持ち止められない。

そんな悲痛な気持ちを詠んだ歌として『伊勢物語』に登場します。

みたらし団子発祥の地

さらに、下鴨神社の御手洗川はみたらし団子発祥の地としても有名です。

みたらし団子は御手洗川に湧き出す水の泡の形を模したものと言われています。

バス亭下鴨神社前すぐの所には、「賀茂みたらし茶屋」があるので、
ぜひ下鴨神社を歩いた記念に、こちらにも寄ってみましょう。
いかにも京都の老舗といった、風情ただよう店がまえです。

賀茂みたらし茶屋
賀茂みたらし茶屋

賀茂みたらし茶屋
賀茂みたらし茶屋

のれんをくぐり、こじんまりとした室内を見渡し、
「御手洗団子一皿」と注文します。

しばらくして出てきたものを見ると、
一本につき団子が五個貫かれ、
一皿三本。これで400円です。

口に運ぶ前に、団子の串を、よく見てください。

何か、気づかないでしょうか?

そうです。変わっているのです。
一番上の団子と、二番目の団子の間が空いています。

三番目、四番目、五番目は普通につまって並んでいます。

一番目の団子と二番目の団子の間の隙間は何なのか?

これも、由来があるのでした。

その昔、後醍醐天皇が下鴨神社の御手洗川で水をすくった時に、
ポコン…とまず一つ泡が浮かんできて、しばらく間を置いて、
ポコン、ポコン、ポコン、ポコンと続けて四つの泡が
浮いてきたということです。この故事をふまえて、御手洗団子は
一番上の団子と二番目の団子の間に少し隙間が開いているのです。

こういう逸話を残しているのは、なんとも風流な話だと思いませんか?

本日も左大臣光永がお話しました。
ありがとうございます。ありがとうございました。