『伊勢物語』オンライン版のご案内~宴は必ず果てるからこそ
散ればこそいとど桜はめでたけれ
浮世になにか久しかるべき
こんにちは。左大臣光永です。
本日は、『伊勢物語』全125段 オンライン版のご案内です。
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『伊勢物語』
平安時代に書かれた歌物語。
在原業平をモデルしたとおぼしき「男」が主人公で、
男の一生を、歌とともにゆったりと描き出します。
昔から親しまれ、能や謡曲の題材ともなり、絵にも描かれてきました。
恋愛話がメインと思われがちですが、
けして恋愛話だけではなく、
さまざまな人生の断面を、歌で切り取っていく…
たとえば男同士の友情の物語という側面もあります。
宴はかならず果てるからこそ
在原業平とその主君、惟喬親王、業平の妻の父、義理の父である紀有常らの交流がほほえましく描かれています。
平安京西南の山崎のむこうに、水無瀬川という美しい川が流れていて、そのあたりに惟喬親王の離宮がありました。
年ごとの桜の花盛りには、その離宮に出かけて、春の遊びをした、惟喬親王と在原業平、紀有常一行の、みやびな、春の遊びのさまが、詩情あふれる文体で美しくつづられています。
盛んなる宴もしまいには果てる、
といいますが、
宴はかならず果てるからこそ楽しく、愛おしく思えるのかもしれません。
宴ってかならず終わるじゃないですか。
私も学生の頃から何千回、飲み会をやったかわかりませんが、
終わらずにずっと続いている飲み会ってのはないですからね。
楽しい!
ワクワクする!
ずーっと続いてほしい、この時間が!
この夜がいつまでも終わらないでほしい!
そう思っても、夜は必ず終わります。
酒だってそうですよ。
昨年、知人からお酒を贈っていただきました。
一升瓶に三本。
こりゃいいなと。
当分なくなんねーぞと。
毎晩、晩酌ができるなあと、
わくわくしてたんですよ。
けっこういい酒なんで、ちょっとずつ、大切に飲んでたんですけど、
やっぱり最後には無くなりました。
あんなにあったのに、なんでこれ、無くなったのかな?
首かしげましたよ。
酒って飲んでると最後にはなくなるんですよね。不思議なことに。
しかしだからこそ酒がうまい。
水道の蛇口ひねったら酒がジャアジャア出るとしても、あまりうれしくないですからね。
宴というものは、最後には果てるからこそ愛おしい。
人生の宴もまたしかり。
そういった感慨が、『伊勢物語』にはつづられているわけです。
冒頭の歌、
散ればこそいとど桜はめでたけれ 浮世になにか久しかるべき
水無瀬の離宮を出発した惟喬親王はじめ在原業平、紀有常らの一行が、
淀川を下っていき、交野とよばれる地域ですね、今の大阪の枚方のあたりまで行く途中に、「渚の院」という離宮に立ち寄って、
たいへん桜が、咲き乱れている。
すばらしいなと。
そこで在原業平、有名な歌を詠みます。
世の中にたえて桜のなかりせば
春の心はのどけからまし
桜なんてものがいっそこの世になかったら、
春に心かき乱されることもなく、のんびりするのに。
逆説的に桜がどんなに愛おしいか、素晴らしいかを言ってますよ。
それに対して義理父の紀有常が答えたのがさいしょに詠んだ歌です。
散ればこそいとど桜はめでたけれ
浮世に何か久しかるべき
その後も、惟喬親王、在原業平、紀有常一行は淀川を下っていき、交野という今の大阪の枚方あたり、桜の名所まで行って、春の遊びを楽しむ。
で、夜がふけるまで惟喬親王は、在原業平とおしゃべりして、
いつまでもこの楽しい夜が明けなければいい。
ああまだ満足しないのに、はやくも月が山の端に隠れてしまう。いっそ山の端が遠くに逃げていって、月が隠れないようにしてくれ。そうすればこの夜がいつまでも続くのに…
一生つきあえる作品
皆で遊んだ楽しい時間。楽しい宴が、いつまでも続いてほしい。
けれど宴には必ず終わりがあり、会者定離。会うは別れの始め。人と人もいつかは必ず別れる時が来る…
そうした人生の悲喜こもごもを、みやびに、美しく切り取った、
それが『伊勢物語』
散ればこそいとど桜はめでたけれ
浮世になにか久しかるべき
短い作品ですが、折に触れて読み返すと、その年齡、その年齡で、感じ方も違ってきます。
若いころはわからなかったが、この歌なんか、いいなあとか、そういうのが見つかるかもしれません。
さまざまな切り口があり、いろいろな読み方ができる、
一生付き合っていける作品です。
今回は、
盛んなる宴も終には果てる、
しかし果てるからこそ宴は楽しい
桜は散るからこそ美しいという、
そういう切り口から『伊勢物語』を語ってみました。これも一つの切り口です。
さまざまな読み方ができ、切り口があり、『伊勢物語』…とても奥深い作品です。
というわけで、
『伊勢物語』全125段 オンライン版
『伊勢物語』の全125段を原文と現代語訳で朗読し、説明を加えたものです。
詳細はリンク先まで
https://sirdaizine.com/CD/IseOL.html
梅の季節が終わり、桜を待つこの時期、平安朝のみやびに思いをはせ、在原業平や惟喬親王らの青春の息吹、友情の物語にも思いを馳せて、またご自身の人生も重ね合わせて、読んでみるのはいかがでしょうか。
『伊勢物語』全125段 オンライン版
詳細はリンク先まで、よろしくお願いいたします。
↓↓
https://sirdaizine.com/CD/IseOL.html
散ればこそいとど桜はめでたけれ
浮世になにか久しかるべき
本日も左大臣光永がお話しました。
ありがとうございます。