和泉式部(三)和泉式部と敦道親王

こんにちは。左大臣光永です。本日東京では雨が降ったりやんだりで、
なんだかイジケた天気でした。そんな中にも雲の切れ間に一時青い空が見えたのは
いい気分でしたが、あなたは週の半ば、いかがお過ごしだったでしょうか?

さて先日発売した新商品
「百人一首 全首・全歌人 徹底解説」
https://sirdaizine.com/CD/Ogura100info.html

多くのご注文をいただき、ありがとうございます。

この商品にあわせて、また年末年始ということもあり、
しばらく百人一首の話題をお届けしていきます。

本日は和泉式部の三回目「和泉式部と敦道親王」です。

▼音声が再生されます▼

http://roudokus.com/mp3/Shikibu03.mp3

和泉式部 敦道親王の御所へ

冷泉天皇第四皇子敦道親王は、ひそかに和泉式部との逢瀬を重ねてきましたが、
このまま和泉式部のもとに通い続けるのは世間の目がつらいものがありました。

また、和泉式部は実家を勘当されて身寄りがないことであり、
生活に困っていました。
館に召し上げることは、和泉式部にとっても悪い話ではないと思われました。

「そうだ。式部に私の館に来てもらおう」

12月18日、月の明るい晩、敦道親王は、
いつものように和泉式部の家に訪ねてきました。

「さあ」

式部を車に招き入れると、敦道親王は言いました。

「ふだん召し使っている侍女がいるなら、つれておいで」

「えっ…?」

侍女を連れてこい…いままでこんなことを言われたことは無かった。ああ、そうだ。
いよいよ、私は宮さまのお館に召されるのだ。和泉式部は確信しました。

ガラガラ、ガラガラ、ガラガラ、ガラガラ、

夜の平安京を進む牛車。やがて敦道親王の館、東三条院南院に到着すると、
車寄せに牛車をとめて、敦道親王は式部の手を取って、
館の中へ案内し、仮にしつらえた部屋に通します。
調度品なども、目立たないようにしつらえてありました。

(こうなったら、なるようにしかならない)

朝が来ると式部は侍女に命じて、櫛や身の回りの品を取ってこらせました。

屈辱の和泉式部

こうして東三条院南院のお屋敷での、式部の生活がはじまります。

「すまない式部。こんなみすぼらしい部屋に押し込めてしまって。
すぐに北の対屋に移してあげるからね」

「そんな、宮さま、私はこのお部屋で、十分でございます」

敦道親王は毎夜、式部の部屋にたずねてきます。式部はいたたまれない思いでした。
まわりの視線を、強く感じるのでした。北の方つきの侍女たちが、
式部についてあれこれ言っているのは、わかりきっていました。

(よくもまあ図々しく…)

そんな声がきこえてくるようで、式部は部屋の格子を、
ぴっちりと閉じっぱなしにしていました。

年改まって寛弘元年(1004年)正月一日。

宮邸では正月の祝いに、たくさんの名士が集まりました。
その中にも敦道親王の姿は美しく、照り輝くばかりでした。
式部は部屋でじっとひきこもっていましたが、ギシッ…廊下に人の気配がします。

「誰…?」

見ると、障子にあけられた穴からのぞいていた目が、さっと隠れて、
障子のむこうで数人の女房たちがヒソヒソ言っている声が聞こえます。

話している内容は聞こえないものの、ヒソヒソ言っていることだけは、
わざとわかるようにヒソヒソ言っているような、そんなヒソヒソ声でした。

(どうせ、いやしい女とか、身分ちがいとか言ってるに決まってる…)

ぐっとこらえる和泉式部。

部屋の外からはにぎやかな管弦の音が響いているのに、
式部の心は真っ暗でした。つくづく、自分がここにいるのは、場違いと感じました。

大江家での、家族そろっての正月が思い出されます。
私の家にはこんなぜいたくな調度品もなければ、部屋も廊下も、
こんなぴかぴかに磨き上げられてはいなかったけど、
家族で、ワイワイと、楽しい正月だった。
もうあの温かい世界には、二度と戻れないのだと!

北の方 ついに出て行く

一方、敦道親王の北の方も、ガマンの限界に来ていました。

「あの女が来てからというもの、宮さまは、
私の所に一切いらっしゃらなくなった。
その上、あの女を北の対に移すとおっしゃっている!
こんな屈辱ってあるかしら」

北の方つきの女房たちは、さかんに北の方を慰めます。

「宮さまはひどいです!」
「北の方さまを、ここまでないがしろになさるなんて」
「それに、あの女もあの女ですよ。
ふつうなら場違いに恥ずかしくなって逃げ出すものを、
まだ居座ってる!なんと図々しいのでしょう」

「ありがとうお前たち。でも私は、
もう何もかも、イヤになってしまいました…」

女房たちに同情をよせられれば、よせられるほど、
むしろそこまで落ちたかと、北の方の女のプライドはズダズダになりました。

ついに北の方は実家に帰ってしまいました。

「えっ!北の方が…!」

式部は、自分のせいで北の方が出て行ったという事実に直面し、
そこまで北の方を追い詰めていたことに改めて気付き、式部は呆然としました。
つくづく、自分がイヤになりました。北の方に申し訳ない気持でいっぱいでした。

しかし、だからといって現状を変えることはできず、夜ごと夜ごと、
求められるままに、宮さまと床を共にするのでした。

そのうちに敦道親王と和泉式部の道ならぬ関係のことは、
周囲でも、噂になってきます…

つづき「花盗人(はなぬすびと)」

────────────────
発売中
────────────────
百人一首 全首・全歌人 徹底解説
単に歌を「おぼえる」というレベルをはるかに超えて、深く、立体的な知識が身につきます。音声11時間23分。テキスト249ページの大ボリューム。百人一首初心者から熱心な愛好者まで納得していただける内容です。無料サンプル音声配信中。

QLOOKアクセス解析