上賀茂神社を歩く(二)
本日は昨日に引き続き、「上賀茂神社を歩く(二)」です。
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百人一首や徒然草との関連でお話していきます。
前回「上賀茂神社を歩く(一)から続きます。
風そよぐならの小川の夕暮れは
みそぎぞ夏のしるしなりける
風そよぐならの小川の夕暮れ時。
夏の終のみそぎを行っている。
風は涼しくもう秋めいているが、
その夏の終のみそぎだけが、まだ
暦の上ではギリギリ夏なんだということを
思い出させてくれる…
百人一首98番、従二位家隆の歌に詠まれた
「ならの小川」は上賀茂神社境内を流れる御手洗川(みたらしがわ)が、
その下流で「ならの小川」と名前を変えたものです。
ならの小川。
御手洗川。
御物忌川(おものいがわ)。
上賀茂神社は広い境内に、これらの小川が水量ゆたかに、美しく流れています。
水の恵みを感じる神社です。
前回は本殿楼門前のさまざまな建物や
摂社を見てまいりましたが、今回、
楼門をくぐって、本殿に参拝します。
権殿・本殿
ここは有料エリアになります。「上賀茂神社」と書かれたたすきを首からかけて参拝します。
向かって左に権殿。右に本殿が、ほぼ同じ形の建物が並んでいます。権殿の「権」は権中納言とかいう時の「権」で「~に次ぐ者」ということです。本殿が万一火事などで使えなくなった時に、一時的に神様にお移りいただく、ということです。
上賀茂神社の神官さんが案内してくれわかりやすく解説してくれます。
現在は檜皮葺の作業をしている最中で、その途中の屋根も見ることができます。足場の上を通っていくので、工事現場のようなヘルメットをかぶって参拝しました。
渉渓園
楼門から出て、ふたたび境内を散策します。
御手洗川の東岸に広がるのが、渉渓園(しょうけいえん)です。
古くこの地には、龍のすむ池があったといいます。昭和35年・皇孫浩宮徳仁(ひろのみやなるひと)親王殿下(現在の皇太子)御誕生にあわせ、
平安貴族が行った「曲水の宴」を再現ために庭園が作られました。それがここ、渉渓園です。
コケから発生する水蒸気がヒンヤリしてます。
園の中央にはスダジイの木が四方に幹をのばしています。
とにかく涼しい。そして周りが紅葉葉だらけですので、秋は真っ赤だろうなと想像させられます。
二葉姫稲荷神社
さて上賀茂神社の北のはずれに、とても恐ろしい場所があります。魔界の入り口といいますか。平安京の闇の部分といいますか…。京都にはいくつかこういう場所があるんですね。
境内のどの案内板を見ても書かれておらず、神社の由緒書きにもその名は出てきません。
上賀茂神社の人にその場所について尋ねると、
「あそこはあんまし行かんほうが…」と、口をつぐまれます。
心霊スポットとして有名で、「怖い」「ゾッとする」という方も多いそうです。
行ってみると、たしかにその場所は存在しています。
二葉姫稲荷(ふたばひめいなり)神社です。
ここは、深いいわくのある神社です。
上賀茂神社の境内のはずれに、摂社である片山御子神社(かたやまみこじんじゃ)があります。賀茂別雷大神の母・玉依媛命(たまよりひめのみこと)を祭った神社です。
そして神仏混交時代、神社の境内には神宮寺(じんぐうじ)といって、お寺がありました。片山御子神社のそばにも神宮寺がありました。そして二葉姫稲荷はその神宮寺の鎮守社だったのです。
二葉姫稲荷神社
しかし明治時代の廃仏毀釈(はいぶつきしゃく)で片山御子神社の神宮寺はよそに移され、二葉姫稲荷神社だけが残った…という、ひどく複雑ないきさつのある神社です。
かなり高台にあり、眼下に町並みを一望できます。
上賀茂神社はどこも人が多いですが、ここは来る人がほとんどいないのです。霊感が強い人はどうか知らんですが、私はとても落ち着けました。
ゲゲゲの鬼太郎の世界というか、そのへんからひょっこり妖怪が顔を出しそうな感じ。上賀茂神社の澄み切った感じもいいですが、こういう怪しい感じも、好きです。
神山をのぞむ
最後に上賀茂神社の御神体・神山(こうやま)を見に行きましょう。
上賀茂神社の祀る賀茂別雷大神は、神武天皇の昔、神社北方の神山(こうやま)にご降臨なさったと伝えられます。実はこの山の名を私はずっと「かみやま」と思っていました。
ほととぎす そのかみ山の 旅枕
ほの語らひし 空ぞ忘れぬ
式子内親王
この歌は、平安時代末期、賀茂の斎院としてお勤めをされていた式子内親王が、ほととぎすの声を聴いて、ああ…いいなあと思われた、その、10代の頃の思い出をずっと後年になって詠んだ歌です。
この歌では「昔」という意味の「そのかみ」という言葉とかけて「そのかみ山」となっていますので、私はずっと山の名前を「かみやま」と思っていたのですが、今回神社の人の案内で「こうやま」だと知りました。
社務所のそばの駐車場のところから、神山は見えます。
おお…あの山から神代の昔、賀茂別雷大神がご降臨されたのか。式子内親王もあの神山を見たのかと、しばし感動にうちふるえ、その場にたたずみました。
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