『徒然草』より「徒然なるままに」
こんにちは。左大臣光永です。三月に入りました。新たな一か月の最初の一日、いかがお過ごしだったでしょうか?
さて本日は…月始めということで、『徒然草』の書き出しです。
『徒然草』は吉田兼好による全243段からなる随筆です。内容は、人生論あり、友情論あり、思わず笑ってしまう失敗談あり、辛口の人間批評や政治批評あり、ことわざのようなキラリと光る警句あり、歴史上の人物の逸話あり…バラエティ豊かです。その、『徒然草』の有名な書き出しです。
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つれづれなるままに、日くらし硯にむかひて、心にうつりゆくよしなし事を、そこはかとなく書きつくれば、あやしうこそものぐるほしけれ。
【現代語訳】
特にやることもないままに、一日中硯にむかって、心に浮かんでは消えていく何ということも無いことを、なんとなく書き付けると、あやしくも狂おしい感じだ。
………
有名な『徒然草』の書き出しです。暇人の文学としての方向性を期待させます。
書き出しに続いて、第一段です。
いでや、この世に生まれては、願はしかるべき事こそ多か(ん)めれ。
御門(みかど)の御位(おおんくらい)はいともかしこし、竹の園生(そのふ)の末葉まで、人間の種ならぬぞやんごとなき。一の人の御有様はさらなり、ただ人(うど)も、舎人など賜はるきはは、ゆゆしと見ゆ。その子、孫(むまご)までは、はふれにたれど、なほなまめかし。それより下(しも)つかたは、ほどにつけつつ、時にあひ、したり顔なるも、みづからはいみじと思ふらめど、いとくちをし。
【現代語訳】
いったい、この世に生まれてきては、人として願わしいことが多いようだ。帝の御位はたいそう恐れ多い。子々孫々に至るまで、天皇家の人々は人間の子孫でなく神の子孫であることが尊い。摂政・関白は言うまでもない。摂政・関白以外の普通の貴族も、帝から舎人など賜るほどの身分の方は、立派に見える。その子、孫までは、たとえ落ちぶれても、なお優雅さがある。それより下の身分の者は、程度によって、たまたま時の勢いに乗ることはあって得意顔をしているのも、本人は立派と思っているのだろうが、実につまらないものだ。
法師ばかり羨ましからぬものはあらじ。「人には木の端のやうに思はるるよ」と清少納言が書けるも、げにさることぞかし。いきほひまうにののしりたるにつけて、いみじとはみえず、僧賀ひじりの言ひけんやうに、名聞くるしく、仏の御教にたがふらんとぞおぼゆる。ひたふるの世捨人は、なかなかあらまほしきかたもありなん。
【現代語訳】
法師ほど羨ましくないものは無い。「人には木の端のように思われるよ」と清少納言が書いているのも、なるほどもっともである。猛々しい勢いで、大声を上げて騒いでいるのにつけても、いいものとは思われず、僧賀上人が言ったとかいうように、世間の名誉・名声を求めるのは苦しく、仏の御教にたがえることもあるだろうと思われる。しかし、ひたすら世を捨てて隠棲している世捨て人は、かえってそうあってほしいところもあるだろう。
人は、かたち・ありさまのすぐれたらんこそ、あらまほしかるべけれ。ものうち言ひたる、聞きにくからず、愛敬(あいぎょう)ありて言葉多からぬこそ、飽かず向はまほしけれ。めでたしと見る人の、心劣りせらるる本性見えんこそ、口をしかるべけれ。しな・かたちこそ生まれつきたらめ、心はなどか賢きより賢きにも移さば移らざらん。かたち・心ざまよき人も、才(ざえ)なくなりぬれば、しなくだり、顔憎さげなる人にも立ちまじりて、かけずけおさるるこそ、本意なきわざなれ。
ありたき事は、まことしき文の道、作文(さくもん)・和歌・管絃の道、又有職に、公事(くじ)の方、人の鏡ならんこそいみじかるべけれ。手などつたなからず走りがき、声をかしくて拍子とり、いたましうするものから、下戸ならぬこそ男(おのこ)はよけれ。
【現代語訳】
人は、容貌・姿が美しいのが得難いすばらしいものだ。物を言うにつけても聞き取りにくくはなく、愛敬があって、言葉数は多くない。こういう人こそ、飽きずに付き合いたい人だ。いいなと見ている人が、思っていたよりも劣った本性が見えるのは、残念なことだ。品位・容貌こそ生まれつきだが、心はどうして良い方向に磨けないことがあろうか。容貌・心ばえがいい人も、後天的に学問をしたり才能を磨いたりしなくなると、品位は下がり、下品な顔立ちの人の間に立ち混じって、たちまち影響を受けてダメになってしまう。不本意なことだ。
望ましいことは、正式の学問である四書五経などに通じていることであり、漢詩を作り、和歌・管弦の道、また宮中の儀式や儀礼に通じ公の儀式の場では人の鏡となることこそ素晴らしい。文字なども拙くはなく走り書き、声はよく神楽など開いたら一座の音頭を取り、酒をすすめられては心苦しい様子はするものの、まったく飲めない下戸というわけではない。こういう男こそ好ましい。
いただいたお便りより
左大臣光永 様
いつもメール配信ありがとうございます。楽しく拝聴させていただいておりま す。
今回のメールの表題を見て、一瞬戸惑いましたが、「由井」→「由比」の変換 ミスと気づき、急に内容が身近に感じられました。私は静岡市駿河区に住んでい ますが、今回の「蒲原・由比を歩く」では、初めて知ることも多く改めて訪ねて みたいと思いました。
昨年末に購入致しました「百人一首 全首 全歌人 徹底解説」素晴らしいで すね。関心がありながらも、理解は無理だろうと考えていましたが、考えが変わ りました。なお、この内容をそのまま書籍にしていただければ、頭の中がより整 頓されることに役立つかなとも感じています。
ありがとうございました。今後とも素晴らしい仕事をされ、ご活躍されること をお祈り申しあげます。
ありがとうございます。確かに漢字が間違えておりました。けっこうあるんですよね。右と左、東と西を間違えたり… こちらこそ、今度もよろしくお願いいたします。
発売中です。
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https://sirdaizine.com/CD/TsurezureInfo.html
本日も左大臣光永がお話しました。
ありがとうございます。











